京大総長と理事に申し入れを行いました

京都大学総長 湊長博殿   理事・副学長 國府寛司殿 

吉田寮現棟建替え方針の撤回と吉田寮自治会との話し合い再開を求める申し入れ

私たちは京都大学吉田寮の卒寮生でつくる「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」会員一同です。当会は、吉田寮が福利厚生と教育の場として引き継がれるとともに、現棟と食堂の文化財建造物としての重要性を伝えることを通じて、交流と文化創造の場としても活かされていくことを願い、2017年10月に設立しました。約120人の卒寮生と、オブザーバーとして市民と学生が参加して活動を続けています。

私たちは、吉田寮の現棟について、貴大学が本年4月14日付けで「吉田寮現棟建替え・現棟建替えにより創出される敷地の活用方針について」として公表した文書に対し、大きな危惧を抱いております。

吉田寮現棟と食堂は1913年に建築されました。学生寮として国内現存最古であるとともに、旧制第三高等学校の建物の一部を引き継ぐ京大最古の建造物でもあり、建築文化財としてかけがえのない価値を有しています。日本建築学会近畿支部と日本建築史学会が「保全活用に関する要望書」を2015年に相次いで提出しており、いずれも「明治初期の建築技術を知る上で貴重な資料」「建築史的に見て希少な存在であり、これを中心に置く南部構内は良質な歴史的環境を形成している」などとして「保全と適切な活用を強く希望する」としています。

京大では清風荘(重要文化財、1912年に主屋完成)をはじめとして13施設が建築文化財として国に指定・登録されていますが、吉田寮現棟と食堂は、近隣の楽友会館(1925年建築、国登録文化財)とともに歴史的環境を形成しており、後世に残すべき建築物として登録が必要と考えております。

文化財としての価値だけではありません。吉田寮では長年にわたって現在の地で学生が生活を共にしてきました。寮運営を大学との対話を重ねながら学生自らが担うことで、多くのことを学び自らの糧としてきました。学生の生活を守る福利厚生施設としてのみならず、今後も引き継ぐべき教育の場として、その存在は京大にとって大きな意味があると考えております。文化財建造物としてのみならず、学生が学び育つ場として今後も寮生が住み続けることもが大切と考えております。

京都大学が吉田寮生に対して求めた吉田寮現棟と食堂の明け渡しを求める訴訟につきまして、昨年に貴大学と被告の寮生との間で和解が成立しました。懸案となっていた耐震工事の実施と、被告の寮生の移行が和解内容として明記されたことは、吉田寮を巡る問題解決の大きな一歩になると期待しておりました。しかしながら貴大学は、吉田寮自治会との話し合いを行わないまま、一方的に「活用方針」を決定しました。大学からの責任ある説明はいまだになく、「建築物としての歴史的経緯に配慮しつつ建て替える」との文面からは、一部の意匠のみを表面的に残し、建造物としては全面的に解体する内容と受け止めざるを得ません。

私たちは京都大学に対して以下を求めます

一 「建て替え方針」を撤回し、現棟の歴史的文化財建造物としてのかけがえのない価値を踏まえ、耐震工事については現棟の価値を損なうことなく補修・改修する工事とすること

 二 吉田寮自治会との話し合いを再開し、工事計画の策定にあたって連携するとともに、建築文化財の専門家も加わった「吉田寮補修委員会」を設置するなどして学内外の意見を踏まえて検討すること

 三 工事計画検討に先立ち、吉田寮現棟と食堂棟の建築文化財登録に向けて、詳細な調査と現状確認を行うこと

 四 京都大学として吉田寮をどのように将来に活かしていくのかを表明すること

 和解を受けて当会が行った昨年9月の申し入れの繰り返しになります。京都大学は「基本理念」として「対話を根幹として自学自習を促し、卓越した知の継承と創造的精神の涵養につとめる」と定めています。貴大学が自ら範を示し、吉田寮生との対話を通じて、大学としての矜持を示されることを切に願います。

                                                                                                             2026年6月17日

                                                                                21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会

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