和解を受け 申し入れ書を提出しました

大阪高裁での和解を受け、京都大学に「吉田寮問題の解決と現棟耐震工事に向けて吉田寮生との話し合い再開を求める申し入れ」を提出しました

申し入れ文20250919

京都大学 総長  湊 長博 殿    理事・副学長  國府 寛司 殿

                       2025年9月19日

               21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会

 吉田寮問題の解決と現棟耐震工事に向けて吉田寮生との話し合い再開を求める申し入れ

私たちは、京都大学吉田寮の卒寮生でつくる「21世紀に吉田寮を活かす元寮生の会」会員一同です。当会は、吉田寮が福利厚生と教育の場として引き継がれるとともに、現棟と食堂の文化財建造物としての重要性を伝えることを通じて、交流と文化創造の場としても活かされていくことを願い、2017年10月に設立しました。約120人の卒寮生と、オブザーバーとして市民と学生が参加して活動を続けています。

貴大学が吉田寮生に対して提訴した、吉田寮現棟と食堂の明け渡しを求める訴訟につきまして、本年8月25日に大学と被告の寮生との間で和解が成立しました。貴大学に訴訟の取り下げを申し入れてきた当会として、今回の和解を問題解決の大きな一歩として歓迎します。

吉田寮では、1913年より112年間にわたって現在の地で学生が生活を共にしてきました。寮運営を大学との対話を重ねながら学生自らが担うことで、多くのことを学び自らの糧としてきました。現在そして将来においても、学生の生活を守る福利厚生施設としてのみならず、今後も引き継ぐべき教育の場として、その存在は大きな意義があると考えております。さらにいえば、吉田寮現棟と食堂は現存最古の学生寮であるとともに、旧制第三高等学校の建物の一部を引き継ぐ京大最古の木造建造物の一つで、建築文化財としてかけがえのない価値を有しており、補修と保全は急務の課題です。

しかしながら貴大学は、長年にわたって積み重ねてきた吉田寮自治会との話し合いを打ち切り、寮生に対して2019年4月に明け渡し訴訟を起こしました。真摯な話し合いによる合意を一方的に破棄して法的手段に訴え、寮生に多大な負担を強いたことは、学生を守り育てるという大学の責任を放棄するものであり、残念でなりません。今回の和解によって訴訟のさらなる長期化が避けられたことに安堵しており、硬直していた事態の打開を期待しております。

以下、京都大学に申し入れます

一 吉田寮自治会との話し合いを再開し、大学人の英知をもって問題解決を図ること

 二 耐震工事について、建て替えを優先するのではなく、現棟の価値を損なうことなく引き継ぐ工事とすること

三 工事計画の策定にあたって、吉田寮自治会と連携するとともに、建築文化財の専門家も加わった『吉田寮補修委員会』を設置するなどして、学内外の意見を踏まえて検討すること

 四 京都大学として吉田寮をどのように将来に活かしていくのかを表明すること

  今年2月に出された京都地裁判決は、京大と吉田寮自治会との間で交わされた確約書が有効であったことを認めるものでした。今回の大阪高裁における和解も、大学と学生との話し合いによる解決が求められた結果であり、吉田寮をめぐる問題解決には大学と吉田寮自治会との話し合い再開が欠かせません。

京都大学は「基本理念」として「対話を根幹として自学自習を促し、卓越した知の継承と創造的精神の涵養につとめる」と定めています。貴大学が自ら範を示し、吉田寮生との対話を通じて、大学としての矜持を示されることを願います。

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